ムーティのイタリアオペラアカデミー報告②

オケリハ3日目

オケだけのリハとしては最後。若い指揮者の指揮で1幕、2幕の2巡目。しかしオペラを振る難しさ!どうしても指揮者は拍をとりたがるけど、オペラは言葉と歌が先にあるから、どの拍の重さも言葉によってまちまち、強弱中強弱などという4拍子は存在しません!
どの指揮者も迷宮入りしてタクトがふらふら宙を舞ってしまう。

ムーティはそんな指揮者の不自然さをユーモアたっぷりに真似してみせ、足を上げて踊ったりジャンプしたり、病気の人みたいにタクトを震わせてみたり左手の小指が立っていたり、そういう動きは全てナンセンス!と言い切る。
Il direttore deve essere chiaro!!!
指揮者の動きはわかりやすくなければならない!

すごいなぁ、いろんな動きで精一杯ごまかしてる指揮者はたくさんいるのに!

ムーティの皮肉は結構辛辣なのにあまり本人を攻撃しない。ちょっと遠慮がちにゴモゴモ言うからか、みんな笑ってカラッと終わる。
時々ライオンのように吠えるけど、威嚇とは感じない。その辺りが魅力であり、一流の指揮者のお仕事なのかな。
休み時間になると家族や知り合いにvieni qua, vieni qua (ここに来て)と盛んに声をかけ、話し相手が見つかるとずうっとしゃべっている。指揮者は孤独な職業なのに、寂しがり屋さんが多いなぁ笑

実はこのアカデミー、同時通訳がついて全員にイヤホンガイドが配られているのです。チャンネルは2つあって日本語訳かオリジナル(ムーティはイタリア語と英語を相手によって使い分けてます)を選んで聞けるのですが、
結構訳しにくいのでは、と思うのが素早い皮肉と下ネタ(はっきり言ってお好きです😅)。
リハの中で歌手のフレーズがスタッカートしてしまった時に、その真似をして、come tre porcellini (三びきのこぶた、ディズニーのイタリア語吹き替え?一つの単語を3匹で分けて言ったりするのを真似)と皮肉った後に、同時通訳ブースに向かって、これどう訳してるの?君たちブースの中で困り果ててるでしょ、と笑う一幕も。
あと3幕の四重唱での公爵のschiavo son(スキアーヴォ ソン)という歌詞だったかな、始めのS(ス)が聞こえなかったぞと嬉しそうにムーティが言ってイタリア人のバリトンテノールが引き笑いを…気になったらイタリア語の辞書で調べてみてください😓

世界の巨匠なのにどこまでもナチュラルすぎて、思ったこと全部しゃべっちゃうかわいい77歳のダンディ!に見えてきました😊