スカラ座オーケストラのピアニッシモ

スカラ座オーケストラのピアニッシモ

 


よくオペラ歌手は声が大きいからオーケストラの音を越えて客席に声を轟かすことができる、と思われている。私もそう思っていた!

何十人ものオーケストラの音を越えてこそオペラ歌手、声の勝利に人々は酔いしれる?

 


ところがスカラ座マリエッラ・デヴィーアの歌ったルクレツィア・ボルジアを聴いた時、デヴィーアの繊細な声の中音域でのピアニッシモに対して、オーケストラが出来うる限り音量を下げてそおっと伴奏したことに正直ビックリした!!

 


デヴィーアの声は、いわゆるガツンと大きな声ではなくて、柔らかくのびていく美声、だから中音域のような高音に比べて響きの飛びずらい音域で歌うときにオーケストラが全員普通の音量で弾いていたらともすればかき消されてしまいかねない。

それを、オーケストラが消え入らんばかりの音量になってデヴィーアの声を客席に届けている!

 


この時の指揮者は、拍振りに徹するタイプ。いつも同じ図形を描いていて、あまり指示しない。つまりこの場合、指揮者はダイナミクスを指定していなかったのに、オーケストラがデヴィーアの歌唱に対してリスペクトを持って自主的に(!)ピアニッシモで伴奏したとしか思えない。

 


歌手は生理的に伴奏がうるさいと大声を出してしまう生き物だと思う。

それを踏まえて、オーケストラが音量を抑えて歌手に音楽的な歌を歌う余裕を与えている。しかも自主的に!!

こんなオケがほかにあるだろうか?