椿姫リブレット考②
A quell’amor che’e’palpito
dell’universo intero
misterioso altero
croce e delizia al cor
全世界の鼓動である愛、神秘的で気高くて、苦しみと喜びを心に与えるもの
これこそが、La Traviataという生き方と正反対の本当の愛、ヴェルディのオペラになるべき素材、
ただの娼婦の落ちぶれていく話ではなく、誰にでも共感できる名作になった所以ですね。
ただの恋愛ではなく、全世界の鼓動、というまさにユニバーサルな視点まで引き上げたことで、
このオペラは誰にでも関係のある話になったのです。
みんな好きだとか愛しているとかそういう視点で歌うんだけど、それだけじゃないんだよ、
とエルマンノ先生はおっしゃいます。
もっと大きな愛の話をしているのだと。
ヴィオレッタのアリアの普段はカットされる2番
自分がまだ純粋無垢で素敵な紳士と出会う夢を描いていた頃、
私は全世界の鼓動である愛を感じていたわ!
A quell’amor che’e’palpito
の部分を
Sentia che amore e’palpito
感じていた!と言い換えることで、忘れていた純粋な愛を思い出したことがわかる2番の歌詞は重要です。
ヴィオレッタが本当はどこにでもいるような普通の女の子だったことが語られるからです。
2番を歌うことで、そこまで自分の内面を過去に遡ってから、次に
Follie!…follie!
ばかな、そんなことありえない!
と始まればレチタティーヴォの部分はさらに説得力を持ちます。