ムーティのイタリアオペラアカデミー報告④

アカデミー4日目

ついに歌手が入ってのオケリハ!

ようやくムーティが振ると思ったらまさかまだ若手を指揮台に上げる。歌手のために心配になる…

3幕の公爵の女心の歌、続いて四重唱。ムーティは歌手が楽譜を無視して勝手に歌うのを許さないので、楽譜通りの歌の素晴らしい掛け合いに感動!

若手の指揮者にとってはこんなに素晴らしい歌手たちでオペラを指揮できることは一生ものの経験!というか楽譜通り歌ってくれる4人で四重唱を振れるのはもう一生ないかも…笑

 


はじめての歌手が入ってのレチタティーヴォはどの指揮者もグダグダ…合わないし、遅いし、ナンセンスだし。でも世界中の指揮者のほとんどが同じ症状だからね。こればかりはイタリア語が必須!

直前の台詞の内容によって入るタイミング、音色、決然と弾くかクエスチョンのようにふわっと弾くか、全て変わってくる。オケの合いの手が上手く入らないと歌手もずっこけた感じになりドラマの緊張感が保たれない。

 


ムーティはオケと歌手全員が揃った今日になって、消えゆくイタリアの音楽についての憂慮を語り始めた。

 


大歌手が素晴らしい声を存分に聴かせて歌ったから、世界中でイタリアオペラ、イタリア音楽は大きな声と大きな音の音楽という認識になってしまった。

ナポリカンツォーネだって声を張り上げて歌うものだと思われている。しかしそれは全然本来の姿と違う!

カンツォーネは海辺のロマンチックなレストランでマンドリンを持った歌手がカップルのお客様のために静かに歌う歌。そんな大きな声で歌ったらびっくりして台無しだ!

 


(筆者はナポリの卵城の近くで夕暮れ時にマンドリン弾きが一人で演奏しているのを聞いたことがある。それは細ーい音だったけど甘いトレモロがとても美しかった。はかなくて、どこまでもレガートで。)

 


だから、とムーティは強調する。自分が死ぬ前に若者に伝えなければ、本当にイタリア音楽は絶滅してしまう。

 


この日は午後用事があり、泣く泣く帰宅したので夕方のオケと歌手のリハーサルは聴講できませんでした…

 


ムーティはジルダ役のソプラノをレッスンするために自らの昼休みを1時間半削って予定を入れていました。タジキスタン出身のソプラノはたしかにすごい美声だけどイタリア語が時々おかしく、padre パードレ(お父さん)がパッドレになったり、bello ベッロ(美しい)がベロになったりしてムーティがその度にあわてて音楽を止めていたから、なんとか修正したかったのだと思う…