アカデミーへのイントロ

アカデミーへのイントロ

 

ミラノに留学していた時、スカラ座の演出稽古に何演目か潜入した。劇場入りの前に演出が作られていく過程は、スカラ座の場合2週間くらいだっただろうか。朝10時から昼1時、その後に各自自宅に帰って昼食をとり、2時半から5時半が夕方の練習。

アンサルドという巨大な稽古場には開帳場が既に作られていて、天井は高く舞台セットが丸々乗るようになっている。

ピアニスト2名と副指揮者、そして舞台でキュー出しをする、日本で言えば演出部?のピアニストたち34名。音楽スタッフはそんな布陣。ピアニストは譜めくりは自分でしなければならない。

 

ちょうど初めて稽古を見に行った時はマクベスの日本公演の練習。たまたま合唱団が3幕冒頭の合唱を声を抜かずに歌ってくれて、柔らかくてどこまでも広がる美しい声と、ppp からffまでのダイナミクスの幅とそのレンジの細かさ正確さに驚愕した。ソリストはアンダーと脇役だけで、ヌッチもグレギーナもいなかったけど、合唱の素晴らしさが忘れられない。

 

その後に行った稽古はロッシーニのモーゼというオペラ。これはその年の127日のスカラ座のオープニングを飾る公演で、指揮はもちろんリッカルド・ムーティ。演出稽古は副指揮が振り、朝と夕方の演出稽古が終わるとアンサルドからスカラ座内に移動してムーティの音楽稽古が終わりと言われるまで(!)続くという。

その頃のムーティは警戒心の塊!音楽稽古には関係者以外絶対に入れないとかたく言われて結局一度ももぐることはできなかった。私はたまたま譜めくりのお手伝いをしていたから、ピアニストには音楽稽古にも来て、と言われたのだけれど、副指揮者の先生からムーティが絶対に気にするからやめろと止められた。

 

ムーティはその後スカラ座のオーケストラにボイコットされて劇場を去る。

思えば最後のシーズンオープニングの公演だったのかしら

 

結局、ミラノではムーティを近くで見る機会は一度もなかった。だから私にとってリッカルド・ムーティとそのリハーサルは雲の上の存在だった。

 

それが2019年、日本で、東京で、上野で!オペラアカデミーを開催するという!!

 

その聴講は私にとって待ちに待った秘仏開陳なのでした!!